研究概要 |
当該年度は、本研究の初年度である。まず、多特性複合の評価法(Multi-dimensional scale for PDD and ADHD)を用いて、PDDとADHDの計179例に対し、Autism with MR, autism without MR, Asperger, PDDNOB, combined-type ADHD, inattentive-type ADHDの6群にわけて特性解析を行った。特徴的な結果として、PDD群でも7割以上(autism with MR 71.3%, autism without MR 77.8%, Asperger 75%, PDDNOS 64.2%)に臨床域に達するレベルの不注意が見られた。また、多動、衝動性についてもPDDのほぼ半数が臨床域に入っていた。一方、ADHD群では、臨床域未満であるが、社会性、コミュニケーションの不得意さがみられた。また、PDDNOSとinattentive-type ADHDの特性分布は似ており、上記の所見も含め、PDDとADHDが近縁疾患であることが示唆された。更なる特徴として、combined-type ADHDのみ、感覚過敏と不器用さが有意に引かった。 なお、特性別の諸検査に関しては、まず、言語発達についてみてみた。自閉症群では、初語25±11ヶ月、2語文45±13ヶ月と定義通り、言語発達に遅れが見られたが、言語に遅れがないとされている他のPDD群でも(Asperger;初語15±3.4ヶ月、2語文26±6.2ヶ月、PDDNOS;初語15±4.5ヶ月、2語文26±6.2ヶ月)、定型発達より平均で3-4ヶ月の遅れがみられた。一方、ADHD群では、初語13±3.1ヶ月、2語文22±4.8ヶ月と定型発達群と変わらなかった。また、初語と2語文の間隔は、精神発達遅滞のある自閉症群以外は、ほぼ一年で定型群と変わらず、初語の月齢と2語文までの間隔にも、相関が見られなかった。 以上のように、今年度は簡便な評価法にて、診断の定義以外の特徴を見出してきた。これらより、診断基準以外の特性も評価していくことの重要性が示唆された。
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