発達障害には、社会性の弱さ、こだわり、多動など種々の特徴が知られるが、各々の程度も含め個人差が大きい。発達障害の生物学的背景の研究も進められ、多くの遺伝子要因が絡み合っている、とされてきている。これらと臨床的特性をつなぐ必要があるが、その前に個人差の大きい臨床的特性を整理しておかなければならない。本研究では、発達障害者に知られる各種臨床的特徴を包括的かつ定量的に測定し、個々の発達障害例の臨床面での全体像、及び多数例での各種特性の相互関係の全体像を掌握することで、生物学的背景につながるクラスター分類やその診断に有用な客観的指標の開発を目的としている。 2012年度には、全年齢層の発達障害者に下記調査や検査を行った。生活歴、発達歴(運動発達を含む)、睡眠調査、ASSQ、AD/HD-RS、LDI-R、感覚過敏の調査、また6歳以下に新版K式発達検査、7歳~16歳にWISC-III、17歳以上にはWAIS-IIIにて発達指数または知能指数を測定の上、診断やアセスメントを行った。代表者が作成したmulti-dimensional scale for PDD and ADHD(MSPA)のトレーニングをメンバーに行いながら施行した。また、このMSPAを英語、ドイツ語、中国語、韓国語に翻訳し、各国の協力者がその国での普及を図り始めた。自閉症のスケールであるADOS、ADI-Rのライセンスを習得し、日本語使用の施設資格も取得し、データ取得を行った。更に、世界的に最もよく使われる、精神衛生・行動スケールのCBCLシリーズのライフステージごと(4段階すべて)の翻訳・逆翻訳を終了した。また、16歳以上には、日本語で普及しているWMS-Rを行い、聴覚記憶、視覚記憶の差異においても検討し、上記MSPAの特性分類とともに解析することで、巧緻性は視覚記憶と関連することを見出した。
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