統合失調症の脆弱性遺伝子は、疾患そのものの原因ではなく、中間表現型と呼ばれている統合失調症で障害が認められている高次認知機能や脳画像と強く関連し、その結果として統合失調症と関連すると考えられている。2008年にゲノムワイド関連解析により、ZNF804Aが統合失調症のリスク遺伝子として同定された。統合失調症患者の血縁者は統合失調症だけでなく、シゾイドパーソナリティ障害のような統合失調症スペクトラム障害を有するリスクが高い。一方、ZNF804A遺伝子の一塩基多型(SNP)、であるrs1344706は、全ゲノム関連研究や追試研究およびメタ解析により統合失調症の感受性に関連することが報告されている。ZNF804A遺伝子のrs1344706の遺伝子多型とシゾイドパーソナリティ特性との関連について、健常者においてSchizotypal Personality Questionnaire(SPQ)とSPQの「認知/知覚」「対人」「解体」の3因子との関連について検討を加えた。その結果、リスク多型であるTアレルキャリアーではSPQの総合得点がG/Gのホモキャリアーよりも有意に高かった。SPQの3因子については、リスク多型であるTアレルキャリアーは、「解体」因子の得点が高かったが、「認知/知覚」因子または「対人」因子については遺伝子型間における有意差を認めなかった。これらの結果は、ZNF804A遺伝子の遺伝子多型が統合失調症の脆弱性を高めるだけでなく、健常者におけるシゾイドパーソナリティ特性を増加させる可能性を示唆していると考えられた。以上の結果をNeuroscience Lettersに報告した。また、新たにサンプルを収集し、言語性・視覚性・遅延再生などの記憶、注意・集中力、言語流暢性などの認知機能、脳MRI画像、プレパルス抑制テストなどの神経生理機能とリスク多型との関連について検討を進めた。
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