研究課題
統合失調症患者に特徴的な幻聴は、患者の正常な社会認知を妨げ、社会生活全般を脅かす大きな要因の一つである。その客観的評価は極めて困難で、治療開始時期や予後に対しても多大な影響を及ぼす。実際に多くの難治例の統合失調症患者に、重度の幻聴を認めることも知られている。本研究の目的は、全頭型脳磁図と高解像度3TMRIを用い、幻聴を有する統合失調症を対象とし、言語音に対する脳内の聴覚情報処理機構障害の神経学的基盤と幻聴の発生機序との関連を明らかにするとともに、視覚情報が幻聴時の聴覚情報処理機構に及ぼす影響を明らかにすることにある。具体的には、幻聴を有す統合失調症患者と健常者を対象に、聴覚刺激と視覚刺激を同時もしくは個々に提示した際の神経活動とその反応部位の違いを検索している。H22年度は既に、統合失調症患者25名と健常者24名の脳磁図・MRIデータの集積を行っている。現時点では予備的な解析段階ではあるものの、健常者に比べ幻聴を有する統合失調症患者では、誘発磁場ならびに時間周波数解析において、個々の情報処理はもとより聴覚情報と視覚情報の統合が障害されている傾向が認められている。H23年度以降はさらに対象者を増やした上で、より多角的な解析を詳細に行うことで、幻聴の神経基盤と、幻聴に起因する統合失調症患者の聴覚-視覚情報の統合障害の解明につながることが期待できる。これらの結果をもとに、最終的には病状の客観的評価、診断、治療や治療評価への応用を目標とする。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Neuroimage
巻: 55 ページ: 891-899
Schizophrenia Research
巻: 117 ページ: 61-67
Bipolar Disorder
巻: 12 ページ: 804-812