研究概要 |
我々は、レビー小体型認知症(DLB)の正確な診断法・病態解明・治療の糸口を模索するために、DLBを含めた様々な認知症患者の臨床症状・神経心理学的所見・血清生化学所見・画像所見の正確な把握に努めた。DLBの臨床診断基準が作成された後でも、DLBが他の認知症性疾患と誤診されていることが問題となっている。DLBを見逃して精神症状に対し,安易に抗精神病薬を投与すると,急速に臨床症状を悪化させ,ときに生命に影響を及ぼすような重篤な副作用が出現する.このように治療,介護,予後の点からも少しでも見逃しを少なく診断精度を上げることは大きな臨床的意義がある.なお、バイオマーカーについては、ApoEに注目し調査した。今回は、まず、ApoE4キャリアーとε4allele頻度について調査した。対象は,アルツハイマー型認知症(AD)145例(Late onset AD(LOAD)129例,Early onset AD(EOAD)16例)、DLB 50例。LOAD群ではApoE4キャリアーは47%、ε4allele頻度が27%。EOAD群ではApoE4キャリアーは50%、ε4allele頻度が31%。DLB群ではApoE4キャリアーは42%、ε4allele頻度が24%であった。ADだけでなくDLBにおいても、ApoE4はADと同様に危険因子であることが臨床的に確認された。DLBのApoEについての臨床報告は、ほとんどなく、あっても剖検からの報告と乖離していた。我々は、MIBGシンチを含めた現行の診断基準(2005)作成後に、調査を行ったので剖検からの報告と一致していたと思われ、MIBGシンチの診断マーカーとしての有用性を改めて認識した。有用な診断マーカーに関するデータの蓄積により、他の認知症疾患との正確な鑑別診断、発症予防、病態解明、新たな治療戦略の手掛かり等に繋がることが期待される。
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