研究課題/領域番号 |
22791136
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
板垣 俊太郎 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80457788)
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キーワード | 事象関連電位 / 注意欠陥多動障害 / 広汎性発達障害 / 統合失調症 / MMN / Nd / N2b / P300 |
研究概要 |
本研究は、成人期の軽度発達障害、主に注意欠陥/多動性障害(以下、AD/HD)と広汎性発達障害(以下、PDD)における認知の障害をミスマッチ陰性電位(mismatch negativity、以下MMN)などの事象関連電位(ERP)を用いて明らかにすることを目的とする。MMNは、聴覚性感覚記憶を基盤とした自動的な無意識認知を反映する精神生理学的反応である。対象となる軽度発達障害は、かつては小児期だけの問題と捉えられていたが、近年、成人期でもその行動特性が持続して、様々な精神疾患を合併しやすいと言われて精神科臨床場面において注目されてきている。しかしながら成人期の発達障害に対するERP研究は数えるほどであり、電気生理学的所見を得ることには意義があると考えられる。 今年度は論文報告1件と学会発表1件を行った。論文報告では54名のAD/HD、43名の統合失調症(以下、SZ)、40名の健常対象群(以下、HC)のERPの比較検討を行った。結果としてlate Nd(選択的注意の指標)においてletency SZ>HC、N2b(刺激に対する意識的注意)においてletency SZ>HC、P300(随意的情報処理)においてletency SZ>HC、amplitude HC>ADHD>SZと有意差が出た。このことから、小児AD/HDではP300の振幅の減衰、潜時の延長という報告が散見されるが、今回のadult AD/HD群では潜時の延長がみられず、成長により認知機能のスピードが回復している可能性を示唆した。 また、第41回日本臨床神経生理学会のシンポジウム7"ミスマッチ陰性電位の有用性"において「MMNと発達障害」というテーマで成人AD/HD19名、HC群15名のMMNの比較検討を提示した。結果は左耳刺激MMNではAD/HD群の有意な潜時の延長を認めたが、振幅の減衰は認めなかった。これは従来報告されてきた小児AD/HDのMMNの振幅減衰と異なる結果であり、成長によりMMN振幅の減衰が改善する可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は論文報告を1件、学会発表を1件行うことが出来た。新たなデータ集計も健常対象群、AD/HD群それぞれ10数例と統計解析を掛けることが可能なだけの一定の数が集まってきており引き続き目標20例を目指す予定である。その一方で、PDD群のデータ集積は予定通り進行していない。そのため、全体としてはおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
AD/HD症例の集積はおおむね順調であるが、健常対象群とPDD症例を集めることをさらに推進する必要がある。また、研究成果の発表を国内学会のみならず、国際学会でも行い、英文論文化の作業を引き続き進める必要があると考える。
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