本年度は主に福島県立医科大学心身医療科に通院中の未投薬、もしくは治療初期の段階にある成人期注意欠如/多動性障害患者22例に対してCPTを実施し、その結果について症状評価尺度やSPECTによる脳血流測定と比較・検討を行った。 症状との関連では、Conners成人期注意欠如/多動性障害評価尺度screening version (CAARS(R)-SV)の項目のうち自己報告書の不注意項目・ADHD indexおよび観察者用の不注意項目・ADHD indexにおいて、CPTの平均反応時間や平均反応時間の変動係数(相対的標準偏差)が有意な相関関係(p<0.05)または相関関係にある傾向(0.05<p<0.09)が見いだされたが、多動・衝動性項目とは相関関係がみられなかった。不注意によるエラー率や衝動的反応によるエラー率とはCPTの有意な相関が認められなかったが、サブタイプ診断とエラー傾向の乖離(表出される症状からは不注意優勢型と診断されるが、CPTにおいては不注意によるエラーよりも衝動的反応によるエラーが顕著にみられるなど)がやや目立った。 また、脳血流との関係では、SPECTで測定した左下前頭回の血流のZ値とCPTの変動係数、右小脳扁桃の血流のZ値と平均反応時間の間に有意な相関が認められた。 以上の結果により、CPTを実施することにより、成人期注意欠如/多動性障害の客観的評価を行うことができ、それがある程度の生物学的基盤を有するものである可能性が示唆された。
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