本年度はGRIN3遺伝子の機能解析を遂行し、そのノックアウト(KO)マウスの線条体においてドーパミンD2受容体の発現量が約50%減少していることを見出した。この知見を基にドーパミン受容体、GRIN3および三量体Gタンパク質の機能関係を分子レベルで解析したところ、Gタンパク質結合能を除去したGRIN3遺伝子は5つのドーパミン受容体(D1~D5)のうち、D2受容体に選択的に結合することが明らかとなり、GRIN3上のD2受容体結合部位はC末側にマッピングされた。また、逆にD2受容体上のGRIN3結合部位は細胞内第3ループ上にマッピングされた。さらにGRIN3 KOマウスにおけるD2受容体量の減少からGRIN3のD2受容体脱感作への影響を考慮し、脱感作に関わるGRKファミリーとの関連を解析した。その結果、GRIN3はそのC末側を介して少なくともGRK2およびGRK6と結合することが明らかとなった。またファミリー遺伝子であるGRIN1およびGRIN2もまたアミノ酸配列が保存されていないにも関わらず、それらのC末側を介してGRKと結合することが明らかとなった。このようにGRINファミリーは共通してC末側を介してGRKと結合することからその機能的重要性が示唆された。最後に、GRIN3のGタンパク質結合能を除去したmutantsは細胞表面上のD2受容体の発現量を大きく減少させた。すなわちGRIN3のみならずGRINファミリーはGタンパク質シグナリングとその後に続くGRKを介した脱感作およびGタンパク質非依存性シグナリングのswitching分子として機能するのかもしれない。次年度はこの点を検討したいと考えている。
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