研究概要 |
【目的】小児期のADHD患者の脳機能に対する塩酸methylphenidate(MPH)の効果をnear-infrared spectroscopy(NIRS)を用いて評価した。【対象】ADHDの男児8例(平均年齢10.9±2.5)。診断はDSM-IVのADHD診断基準を用い,K-SADS-PL,行動評価尺度(親用:CBCL,ADHD-RS-J;教師用:TRF,ADHD-RS-J)を併用した。【方法】MPHを内服していない状態と,MPH内服(0.5~1.0mg/kg/day)4週間後の状態での脳機能をNIRSにより評価した。脳機能の評価には日立メディコ製光トポグラフィ装置ETG-7100を使用し,3×10に配列した測定用プローブの最下列が脳波記録国際10-20法のT3-Fp1-Fp2-T4のラインに一致するように設置,測定はintegral modeによって行った(47ch)。賦活検査(語流暢性課題)はSutoら(2004)の方法に倣い,酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)の変化量を求めた。MPHの効果判定にはADHD-RS-IV-Jを用いた。【結果】MPHを内服することで,ADHD-RS-IV親用および教師用ともに合計点(both p<.05),不注意得点(both p<.05),及びADHD-RS-IV親用の多動性衝動性得点(p<.05)は有意に低下した。 MPHの内服後の前頭部のoxy-Hb変化量は,MPH内服していない状態での前頭部のoxy-Hb変化量よりも有意に大きかった。【考察】MPH内服後のNIRS測定で課題後半の前頭下部の血流量が増加していることがMPHの有効性を示すと考えられた。NIRSは非侵襲的に,繰り返し脳機能を測定できる装置であり,ADHD児の薬物治療効果判定に有用であると考えられた。
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