動物実験で男性ステロイドを女性ステロイドに変換する酵素aromataseと攻撃性の間に関連性があることが示唆されているため、ヒトの攻撃性と脳内aromataseの関連を探るために今回の研究を行った。生体脳内のaromataseを測定するため、先行のaromatase可視化PETプローブ[11C]vorozoleの問題点を克服した新規のPET化合物である[11C]cetrozoleを開発し、動物実験を経て安全性を確認して今年度はヒト臨床試験を行った。 健常人において、[11C]cetrozoleは視床・視床下部・扁桃体に高い集積を見せ、この結果は、[11C]vorozoleの結果と一致するものである。サルやラットでは、視床における集積は低いため、この違いが種差によるものかどうか、今後検討が必要である。男性11名女性10名の健常被験者をリクルートしたが、視床・視床下部・扁桃体において男性のほうが女性より[11C]cetrozoleの集積が高い傾向がみられたが、有意な差にはいたらなかった。 また、PET試験の前に、個人の攻撃性、および気質性格をはかるための質問紙に回答を求め、そのスコアと脳内のaromataseレベルの相関をはかった。視床におけるaromataseレベルは、攻撃性および共感性と正の相関を示し、また視床下部におけるaromataseレベルは、慈悲心と正の相関を示した。 この結果より、ヒトにおいてもaromataseと個人の攻撃性、性格・気質との関連があることが示唆された。ただ、今回の試験では健常被験者のリクルートまでにとどまったので、今後、攻撃性を示したり協調性を欠く精神疾患患者におけるPET試験を検討したい。
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