猜疑心と妄想に関わる認知機能の脳活動を定量的に把握することを目的に、1)健常人における行動実験、2)健常人における機能的脳画像(fMRI)を用いた実験、3)脳損傷患者を対象とした実験を実施した。実験で用いる課題は、他者の表情に騙されないことが要求される信頼ゲームを用いた。表情に対する猜疑心に関わる脳機能と、相手の裏切りと信頼行動の学習による信念の形成を調べた。 1)行動実験 10名の健常者を対象にした。信頼性の高い顔の人物の裏切りに対する信念形成はベイズ確率により説明されうることが判明した。 2)機能的脳画像(fMRI)を用いた実験 健常者を対象に、機能的脳画像(fMRI)を用いて、信頼ゲームを実施し、信念形成に影響を及ぼす猜疑心の脳活動データを取得中である。現在までに8名のデータを取得した。猜疑心には情動に関与する脳領域(前頭葉腹内側面、島皮質、側頭葉)の活動が関わっているという予備的結果を得た。 3)患者を対象にした実験 過去の研究で、側頭葉内側部(扁桃体)を損傷すると他人に対して信頼性の判断ができなくなることが報告されている。そこで、側頭葉内側部にてんかんを持つ患者を対象に信頼ゲームを実施し、焦点切除術前後で行動結果を比較し、信念形成と猜疑心の関連を検討中である。
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