剖検時及び腰椎穿刺時に採取した脳脊髄液(cerebrospinal fluid : CSF)中のTDP-43をELISA法などを用いて定量的に検出し、前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration : FTLD)の臨床診断法を確立することが本研究の目的である。TDP-43のリン酸化および断片化がFTLDや筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病理過程に深く関わる変化であることが明らかになってきており、このような異常TDP-43を定量的に検出することにより、疾患の早期診断や他の神経変性疾患との鑑別診断が可能になると考えられる。そこでまず始めに全長TDP-43酵素結合性免疫吸着検定法(ELISA)の構築を行った。人工CSFにリコンビナント全長TDP-43を加えた系において、サンドイッチELISA法および間接ELISA法によるTDP-43の測定に成功した。検出の特異性を高めるために今後はサンドイッチELISAを採用することになったが、検出系の見直しにより、従来法よりも10-50倍感度良くTDP-43を検出することに成功した。この検出系を用いてALS患者および、末梢神経障害であるギランバレー症候群(GBS)患者のCSF中TDP-43の検出を行った。ALS患者におけるCSF中TDP-43濃度の方が高く、Mann-Whiteney U-testでの統計解析を行った結果、p=0.027と有意差があることが判明した。今後はさらに多検体のCSFを収集し、特にアルツハイマー病やFTLDのCSF中TDP-43濃度の測定を行う予定である。また臨床応用に向けてさらにTDP-43の検出感度を高めること、および多検体測定と少量のCSFでの計測を可能にするため、蛍光ビーズを用いたTDP-43検出法を確立することを計画している。
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