近年の疫学研究により、水道水中のリチウム濃度と地域一般人口中の自殺率との間に有意な関連があることが複数の研究によって報告され、水道水中の微量なリチウム濃度が自殺予防に寄与する可能性が示唆されている。本研究では、大規模な思春期一般人口標本を対象とした疫学研究を実施し、学校区の水道水中リチウム濃度とその校区中学生集団における精神保健問題やいじめ行動の頻度との関連を検討することを目的としている。研究初年度の予備的調査を経て、研究2年目にあたる本年度は、高知県の思春期疫学調査データとリンクさせるための該当校区の水道水を研究協力機関の支援を受けて収集し、そのリチウム濃度測定を行った。リチウム濃度測定については、複数の機関に対して分析を依頼し、その信頼性の確認を行っている。水道水中のリチウム濃度と疫学データとの関連を分析するために、疫学データの解析方法の検討を行った。また、三重県の思春期疫学データとリンクさせるための校区ごとの水道水収集作業を継続している。本年度の調査により得られたデータを詳細な解析にかけ、中学生集団における自殺関連問題(自傷行為や希死念慮)、気分に関する問題、衝動的行為等の頻度と水道水中のリチウム濃度との関連を次年度に明らかにするための基盤が整った。研究最終年の来年度においては、本年度収集データ基づいた解析を行い、水道水中の微量リチウム濃度と精神保健問題との関連を明らかにする。
|