研究概要 |
目的:近年、水道水中に含まれる微量なリチウム濃度と地域における自殺率との有意な関連を示す複数の報告がある。本研究では、精神保健疫学調査による思春期の衝動性、自殺関連問題、精神的健康度、等と学校区の水道水源中リチウム濃度との関連について検討した。方法:無記名自記式任意協力調査で得られた高知県内18の公立中学校在籍生徒2345名(男性51.3%:平均年齢13.8歳)のデモグラフィックデータ、希死念慮様観念、自傷行為、対人暴力、対物暴力、いじめ、精神的健康度(GHQ-12)を収集し、それらと各学校水道水源中リチウム濃度との関連を検討した。18校区の水道水中リチウム濃度の平均は0.55 μg/L (SD=0.58)、 LogLi 平均は -0.56 (SD=0.65)であった。結果:各学校区水道水源中リチウム濃度は、思春期における低い対人暴力と有意に関連し(OR=0.72, 95%CI: 0.56 to 0.92, p<0.010)、それらの関係は、年齢、性別、身長、体重、睡眠時間、学校生徒数、両親との同居、推定SESを調整後も有意であった(OR=0.69, 95%CI: 0.51 to 0.93, p<0.016)。構造法的式モデルによる解析では、LogLiが衝動性と有意に関連し、その衝動性を介してLogLiとGHQ-12スコアが関連することが明らかとなった(x2 = 19.37, df = 5, p =.002, CFI = .984, RMSEA = .035, AIC = 63.37, BCC = 63.50) 。考察・結論:水道水源中リチウム濃度は思春期精神保健に関連する重要な環境因子であることが示唆された。
|