| 研究概要 |
本研究は,マウスモデルを用い,皮膚炎症障害モデルの作出と移植細胞が皮膚障害の軽減・回復を実際に促進するかどうかを検討することを最優的な目的としている.
今年度は,マウスモデル作製とその炎症状態の評価を行うにあたり基礎的なデータの収集を実施した.放射線による正常組織への障害のひとつとして疼痛を伴うことが挙げられ,疼痛は炎症と密接な関係にあることから,痛覚神経への影響を評価した.評価を簡便にする目的で,放射線と同様にDNAに損傷を与える抗がん剤による痛覚神経細胞あるいは痛覚関連の受容体を有する培養細胞を用いてCaイメージング装置を用いて測定を行った.
マウス背根神経節より採取した痛覚神経細胞にタキソールを10μMで曝露すると一部の細胞では細胞内カルシウム濃度が上昇し,神経細胞が活性化していることが観察された.また,培養細胞に対して低濃度のタキソールをあらかじめ処理しておくと,痛覚関連受容体刺激に対する応答性が増加した.
これらの結果は,DNA損傷を引き起こす抗がん剤でも疼痛を誘発しうることが明らかとなり,放射線とともに疼痛及び炎症の刺激因子として有効であることを示した.それとともにこれらの手法はin vitroにおける疼痛誘発の細胞分子生物学的解析ツールとして用いることができることが示唆された.次年度以降では,マウスモデルの作製を進めるとともに,単球等の細胞がこれらの疼痛誘発を抑制しうるかどうかを明らかにしていく予定である.
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