本研究はAlzheimer病に関する大規模な縦断的研究データベースを用い、FDGPET画像に様々な画像処理・解析を試みることで、治療効果や経時変化を見出す検出力を最大化しうる条件を探求するものである。画像データは全米の多施設共同研究であるAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)から使用の許可を得ており、また画像処理・解析には米国ワシントン大学で開発されたNeurostatプログラムを使用した。本プログラムは多くのオプションを備えている上、コマンドラインを用いてバッチ処理実行プログラムを作成することで、大量の画像処理を自動的に行うことができる。対象はADNIデータベースから得られたAlzheimer病症例を中心に、mild cognitive impairment (MCI)症例および正常例から成るトータル約300症例である。これらの6ヶ月後、1年後の経時変化を、従来法よりも誤差の少ない方法を考案して解析した。またTarget areaとして10通りの設定を行い、偏差が少なくなる方法を検討した。その結果偏差の少なかった後帯状回のみと、後帯状回+頭頂葉+側頭葉をtargetとした場合において検出力検定を行った。例えば25%treatment effectを検出するには前者で467、後者で646ケースの母集団が必要となるという結果が得られた。これらはAlzheimer病治療薬の治験を想定した際にはやや大きなサンプルサイズであり、費用の増大に直結する。更にばらつきの少ない指標とtargetを模索していく必要があると思われる。
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