研究課題
放射線治療は高精度放射線治療技術の発達により、腫瘍の局所制御は向上したものの、浸潤制御は未だ満足のいく成果は得られていない。本研究では、放射線治療が腫瘍の遊走性・浸潤性にどのような生物学的効果をもたらすのかを詳細に調べることを目的とした。ヒト神経膠芽腫細胞株(CGNH-PM、U251)を用いてX線もしくは炭素線を単回照射し、照射後24時間における細胞の遊走性についてwound-healingassayにより評価した。その結果、X線および炭素イオン線は神経膠芽腫細胞の遊走性を亢進することが明らかとなった。このことはヌードマウス脳内移植モデルを用いたinvivo実験からも同様の結果が得られた。X線照射後24時間以内に細胞培養液中に放出されたグルタミン酸の量を測定した結果、照射線量依存的に増加しており、照射による遊走性の亢進はグルタミン酸受容体拮抗薬(GYKI52466)により抑制された。X線照射後の細胞について細胞接着因子の発現を調べた結果、照射によりE-cadherin発現の低下およびN-cadherin発現の上昇が認められた。一方で、GYKI52466を投与した細胞における両cadherinの発現は、コントロールと比べて有意な違いは認められなかった。以上の結果から、神経膠芽腫細胞の照射による遊走性の亢進にはグルタミン酸およびcadherinが関与していること、またグルタミン酸受容体拮抗薬は放射線治療において有用な遊走阻害剤となる可能性があることが示唆された。
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