乳癌温存療法の中核をなす温存手術は、残存のない腫瘍切除が必須であるが、他方、QOLの点からは最大限の乳腺組織を残すことが求められる。これら相反する要求を満たすため、腫瘍の進展範囲の正確な診断と手術範囲決定ナビゲーションへの応用が最重要の課題である。造影MRIにより正確な病変進展範囲の評価が可能となってきたが、手術時と検査時の病変の移動・変形などのため、手術範囲決定ナビゲーションへの応用は進んでいない。 今年度は300症例以上にて乳房造影MRIおよび造影CTを行い、画像ゆがみ補正ソフトのためのデータ収集を行った。また、20例あまりに術前ナビゲーションを行った。具体的には造影CTのデータから皮膚面と腫瘍を3次元画像表示し、患者に投影し、切除範囲決定・切除した。 背臥位と腹臥位とでは腫瘍の位置がずれることはよく知られているが、熟練した人間の目ではその位置ずれを容易に認識できる。コンピューターでもそのずれを認識することではないかと思い研究を開始したが、うまくいかず暗礁に乗り上がってしまった。ただし、上腕を固定すると腫瘍の移動が少なくなることがわかった。来年度は次善の策として超音波を組み合わせて術前ナビゲーションを行うことを考えている。 派生的研究として、乳腺MRI拡散強調像の最適撮影条件についての研究を北米放射線学会で発表した。また、MRI(拡散強調像)の潰瘍性大腸炎の評価の有用性に関する研究、および乳腺MRIによる化学療法評価により予後予測できるという研究、を査読付き雑誌に発表した。
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