乳癌温存療法の中核をなす温存手術は、残存のない腫瘍切除が必須であるが、他方、QOLの点からは最大限の乳腺組織を残すことが求められる。これら相反する要求を満たすため、腫瘍の進展範囲の正確な診断と手術範囲決定ナビゲーションへの応用が最重要の課題である。造影MRIにより正確な病変進展範囲の評価が可能となってきたが、手術時と検査時の病変の移動・変形などのため、手術範囲決定ナビゲーションへの応用は進んでいない。腫瘍の進展範囲の正確な診断と手術範囲決定ナビゲーションへの応用として、近年進歩の著しい画像融合技術、3次元画像処理技術を応用して解決するのが本研究の目的である。ならびに腫瘍進展のより正確な診断のために造影MRIの撮影方法改善、将来的な手術ナビゲーションも念頭に非造影MRI(拡散強調画像)の乳がんにおける有用性も検討した。 造影CTによる乳がん範囲決定と手術ナビゲーションへの応用を行った。試行錯誤の後、上肢を固定すると、乳房の形状の変化ならびに腫瘍の移動が少なくなることがわかったので固定具を使用することにした。38例段階での検討では断端陽性率は15.8%とこれまでの背臥位造影MRIによるナビゲーションでの断端陽性率19.2%(同様の症例の腹臥位MRIで範囲決定して手術した場合の断端陽性は約40%であった)よりも低い値であり、手術ナビゲーションとしては最善の方法である可能性が示唆された。 非造影MRI(拡散強調画像)などの研究では下記のとおり3個の査読ある英字紙にて学術論文発表と5個の学会発表を行うことができた。それらでは、「MRI拡散強調画像で癌化学療法の効果を予測できること」、「化学療法後のMRI拡散強調画像で予後を予測できること」、「3TのMRIでは従来と異なる脂肪抑制方法が有用であること」が示され、臨床的に有用であった。
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