ポルフィリンが腫瘍集積性を有することは知られているが、通常のポルフィリンは金属との結合が遅く、半減期の制限のある放射性医薬品への応用は困難とされてきた。そこで本研究は、金属との結合が非常に速い八臭素化ポルフィリン誘導体に着目し、新規「放射性金属-八臭素化ポルフィリン錯体」を開発し、腫瘍の新規核医学診断・治療薬剤への応用の可能性を明らかにすることを目的として検討を行った。八臭素化ポルフィリン誘導体としては、正電荷を持つOctabromotetrakis (N-methylpyridinium-4-yl) porphine (OBTMPyP)と、負電荷を持つOctabromotetrakis (4-carboxyphenyl) porphine (OBTCPP)を合成した。これらの化合物について、放射性金属である^<111>In、^<67>Gaを用いて標識反応条件の検討を行った。その結果、^<111>InとOBTCPPを用い、micro waveで標識反応を行ったところ、反応時間3分で、放射化学的純度98%の標識体を得ることに成功した。この^<111>In-OBTCPP錯体を正常マウスに尾静脈投与し、体内動態に関する基礎的な検討を行った。その結果、^<111>In-OBTCPPは、投与早期から肝臓、脾臓に高い集積を示したが、腸や腎臓など、下腹部臓器への集積は低かった。これらの結果は、^<111>In-OBTCPPが、腎臓癌や膀胱癌など、従来のFDG-PETでは検出の困難であった腫瘍の診断薬となり得る可能性を有していることを示唆している。今後、担癌マウスを用いた検討を行い、腫瘍への集積性を検討する予定である。
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