本研究では、生理的食塩水等の臨床的に用いられている薬剤を使用し、MRIなど生体イメージングを併用することにより、新しいリンパ管・リンパ節のイメージング法を開発することが目的となる。昨年度の光イメージングを用いた基礎研究で得られた結果(皮下への液体投与によりリンパ管の描出が可能であった)をふまえて、本年度はMRIを用いた人を対象とした応用について検討した。まず、本研究費で購入したMRI マイクロコイルと当院設置の3T-MRIを用いて、生理的食塩水をファントムとして、MRI撮像シーケンスの検討を行った。その結果として、脂肪抑制併用T2強調画像法とbalanced SSFP (FIESTA)法が液体の描出に適切と考えられた。続いて生理的食塩水の皮下注射によるリンパ管の描出について、健常ボランティアにおいて上記の撮像法を用いてた検討を行った。通常の撮像法ではリンパ管の描出が困難であったが、造影前の画像との減算処理行い、maximum intensity projection (MIP)処理を併用することにより、前腕部においてリンパ管を描出することができた。しかし、注射部位や投与量、投与後の圧迫等の処置により、描出される場合とされない場合が生じた。また、リンパ節までの描出は困難であった。今後は、これらの投与条件の最適化が必要であり、より効率的で再現性のある方法の開発が必要と考えられた。また、本研究で得られた結果の一部を本年度、第98回北米放射線学会で電子ポスター発表を行った。
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