研究課題
昨年度研究では、アポフェリチンとCEST造影剤の静電的な相互作用を利用することによって、球殻状タンパク質であるアポフェリチンの内腔にカチオン性CEST薬剤を高濃度に濃縮させることに成功した。しかしながら、本手法で内包したCEST造影剤は、アポフェリチンの内壁との相互作用が原因として考えられる分子運動の抑制によってピークがブロードニングし、十分なCEST効果が得ることが難しいことが明らかとなった。そこで、本年度、新たに電気的に中性なCEST薬剤を設計・合成し、これをアポフェリチンに高濃度にて内包させることを試みた。電気的に中性なCEST薬剤をアポフェリチンに内包させた場合、Z-スペクトルにおけるピークブロードニングは抑制され、CEST造影効果が認められるアポフェリチン誘導体MRI造影剤の調製に成功した。また、アポフェリチン表面をポリエチレングリコール、ポリサルコシン、デキストランなどの水溶性高分子にて被覆することによって、アポフェリチンの血中滞留性の向上を計った。血中滞留性を向上させることに成功した他、被覆する高分子の厚さを制御することによって水溶性高分子被覆アポフェリチンの粒子径を制御することが可能であることを明らかにし、同時にEnhanced Permeation and Retention (EPR)効果を利用した癌疾部位選択的なデリバリーを達成した。最後にマウスを用いたインビボイメージングについて検討を行い、CEST薬剤内包型アポフェリチンのCEST効果を利用したMRI造影剤としての基礎性能評価を実施した。上記の通り、設定した研究目標をほぼ達成した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Nanomedicine, Nanotech. Biol. Med
巻: 7 ページ: 638-646
doi:10.1016/j.nano.2011.01.015