本研究の目的は、膜結合型マトリクスメタロプロテアーゼ(Membrane-type 1 matrix metalloproteinase ; MT1-MMP)基質ペプチド配列を母核として、RIシグナルドメイン、細胞膜捕定ドメイン、阻害ドメインとを組み合わせることで、がんにおけるMT1-MMP活性依存的に病変局所に捕捉・濃縮される「MT1-MMP依存的捕捉型プローブ(MT1-MMP Pdependent anchoring probe ; MDAP)」を開発することにある。本年度は、基質ペプチドの探索、MDAPの合成検討、インビトロ検討、インビボ検討を行った。 1.基質ペプチドの探索 前年までにMT1-MMP基質ペプチド配列探索を目的としてファージディスプレイ法によりMT1-MMPに親和性を有することが期待されるファージの濃縮を確認したが、ペプチド配列を同定・合成し評価したところその有効性を認めなかった。そこで、最近報告された基質ペプチドについて論文検索を行い、プローブ設計の有効性を評価するために適したペプチド配列を抽出した。 2.MDAPの合成検討 膜捕定ドメイン鎖長の異なるいくつかのプローブ骨格を設計し、固相・液相合成法を使い分けることで合成に成功した。^<111>Inを用いた標識合成にも成功した。 3.インビトロ評価 ^<111>In-MDAPの有効性を調べるため、MMPタンパク質を用いた切断アッセイを行った。その結果、タンパク質処置により^<111>In-MDAPのHPLCピークが大きく減弱し、大きな分子量を持つ本プローブにおいてもMMP認識性を損なわないことを見出した。 4.インビボ評価 ^<111>In-MDAPについて正常マウスでの体内分布実験を行った。その結果、比較的高い安定性と血中滞留性が認められ、がんへの集積性が期待される結果が示された。
|