研究課題
低酸素応答性のルシフェラーゼ遺伝子を導入した、マウスの肺転移モデルを作成し、肺転移形成時の腫瘍内低酸素を光イメージングで経時的、非侵襲的に観察可能にする。また、低酸素応答因子阻害剤や血管新生阻害剤が転移巣の低酸素や転移の抑制効果についてこのモデルを用いて評価することが本研究の目的である。平成22年度には、尾静脈注射から肺転移が形成されるマウス乳がん細胞にルシフェラーゼ遺伝子、あるいは低酸素誘導性のルシフェラーゼ遺伝子を導入し、IVIS[○!R]Imaging Systemを用い肺転移の光イメージングか可能となるマウスモデルを確立した。低酸素誘導性のルシフェラーゼ遺伝子と同時に恒常的に分泌型のルシフェラーゼ遺伝子を発現させることによって、腫瘍量と腫瘍内の低酸素を同時に定量的に評価できるシステムを確立することに成功した。このモデルを用いることによって肺転移の増大が一定の速度で進行するのではなく、一過性の低酸素応答因子の上昇が肺転移の急速増大に影響をあたえることを明らかにした。また低酸素誘導因子阻害剤の投与により、イメージング上、肺転移の増大が抑えられ、実際の肺転移の個数やサイズが抑制されることを確認している。また、一過性の低酸素応答因子の誘導が、腫瘍内低酸素とは無関係に起きていることが明らかになったため、現在、肺転移形成時の腫瘍内環境について免疫組織学的な検討を開始したところである。これらの研究内容は癌の転移のメカニズムのうち、特に他臓器に到着したのちの腫瘍の増殖のメカニズムに迫るものであり、このメカニズムの解明は癌転移の新たな治療の確立に有意義なものである。
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Journal of Controlled Release
巻: 144 ページ: 109-114