研究概要 |
粒子線治療はその物理学的特性により、X線治療と比較して良好な線量分布を作成することができる。そのため少ない副作用で、通常の放射線治療では不可能ほどの高線量の照射が可能である。遺伝子治療を併用した粒子線治療を行うことで、高い抗腫瘍効果を保ちつつ、局所制御線量の低減が可能となり、正常組織障害を軽減することができると予想される。本研究の目的は、遺伝子治療併用粒子線治療の臨床応用への第一段階として、培養腫瘍細胞に対して、in vitroおよびin vivoでのアデノウイルス・ベクターを用いたp53遺伝子治療における遺伝子導入効率の確認、抗腫瘍効果の確認、粒子線治療との併用効果の確認などの基礎的研究を行うことである。H22年度はヒト膵癌細胞を用いて実験を行った。膵癌は、ジェムザール等新規抗癌剤の併用が適応されつつあるが、原発巣の制御を含めて更なる治療成績の向上が望まれている。ジェムシタビン単独、放射線照射単独、ジェムシタビン+放射線併用の3群に分けて実験を行った。ジェムシタビンの増殖抑制効果をMTT Assayで判定した。また放射線照射と併用療法の効果はColony forming assayで判定した。また、ヌードマウス皮下にMIAPaCa-2を移植し、上記3群での増殖抑制効果と生存率を比較した。アポトーシス関与はいずれの治療法でも5%以下と少ないことが分かった。LC3の定量、電子顕微鏡像での確認で、いずれの治療法においてもオートファジーが関与していることが分かった。ヌードマウスを用いた実験では、いずれの治療法でも腫瘍抑制効果が見られ、摘出した腫瘍には、LC3,Beclin-1の発現が確認された。今回の検討では膵癌の増殖抑制効果にはアポトーシスの関与が少ないことが判明し、新たな知見と考えられた。
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