研究概要 |
〈研究目的〉 本研究では、血小板上に特異的に発現している分子を遺伝子導入により静脈壁に発現させることにより、局所での静脈血栓形成を抑制することを検討する。CLEC-2は膜蛋白であり、がん細胞上に発現しているPodoplaninと結合することにより、血小板凝集を惹起するといわれている。さらに最近の研究では、動脈硬化性病変など血管壁の異常状況においてはPodoplaninが過剰発現しており、これが血栓形成を引き起こすことが示されてきている。したがって本研究においては、静脈壁にCLEC-2を過剰発現させ、静脈壁でのPodoplaninの機能を競合的に抑制することにより、これらの異常状況下での血小板凝集を抑制しようとするものである。 〈研究内容と結果〉 1、培養細胞への導入実験 CLEC-2の組換えアデノウイルスを作製した.培養したヒト血管平滑筋細胞に対し、この組換えアデノウイルスにて遺伝子を導入した結果、持続的に目的蛋白が発現することを確認した。また、同様にラットの血管平滑筋細胞でも同じ結果が得られた.これらの細胞を用いて、生体外で血小板凝集反応への影響を検討すると、有意に血小板凝集を抑制する可能性が示唆された。 3、動物実験モデルの作製、遺伝子導入、評価 静脈血栓モデルは、SDラットの下大静脈を露出・結紮して作製した。今後,この静脈血栓モデルの再現性等を評価した後に,遺伝子導入による抗血栓効果の有無を検討する予定である。
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