研究概要 |
<研究目的> 本研究では、血小板上に特異的に発現している分子を遺伝子導入により静脈壁に発現させることにより、局所での静脈血栓形成を抑制することを検討する。CLEC-2は膜蛋白であり、がん細胞上に発現しているPodoplaninと結合することにより、血小板凝集を惹起するといわれている。さらに最近の研究では、動脈硬化性病変など血管壁の異常状況においてはPodoplaninが過剰発現しており、これが血栓形成を引き起こすことが示されてきている。したがって本研究においては、静脈壁にCLEC-2を過剰発現させ、静脈壁でのPodoplaninの機能を競合的に抑制することにより、これらの異常状況下での血小板凝集を抑制しようとするものである。 <研究内容と結果> 平成22年度の実験結果を踏まえ、まずラット静脈における抗血栓効果の評価を継続し,検討した。 組換えアデノウイルスベクターを用いてSDラットの下大静脈に遺伝子導入を行ったのち、蛋白発現量、酵素活性測定を行った。静脈血栓モデルは、SDラットの下大静脈を露出・結紮して作製した。結果として,遺伝子導入後の静脈血栓モデルにおいては,静脈血栓量が少ない状況が示唆されたが,その差は少なかった。実験計画ではラットにおける評価を行ったのち,ウサギによる検討も考慮していた。しかし,ラット静脈血栓モデルにおいて実験計画当初に予想していた程度の差は認めなかったため,平成23年度はラットでの評価を継続し,今回の実験ではウサギは使用していない。遺伝子導入が静脈血栓量に影響を与える可能性が示唆されたが、その程度にはラット静脈血栓モデルにおける血栓の性状やアデノウイルスに対する炎症反応等が影響した状況が考えられる。
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