(目的):ギメラシルは、経口フルオロピリミジン誘導体S-1の1成分である。ギメラシルは、元々は、5-FUを分解するdihydropyrimidine debydrogenaseを阻害し、延長した5-FU濃度を血液及び腫瘍組織に得るためにS-1に添加されている。以前の研究で、我々は、ギメラシルはDNA2重鎖切断修復における相同組換えの阻害により、放射線治療の効果を増感することを示した。今年度の研究では、ギメラシルの抗癌剤に対する効果及び放射線増感効果を検討した。 (方法):DLD1細胞(ヒト大腸癌細胞)、CHO-k1細胞、Xrs5細胞、XRCC3細胞を使用した。Xrs5細胞は、DNA2重鎖切断修復における非相同末端修復が欠損しており、親細胞はCHO-k1細胞である。XRCC3細胞は、DNA2重鎖切断修復における相同組換え修復が欠損しているげっ歯類の細胞である。抗癌剤、放射線照射の処理後、細胞の生存率をコロニー形成能で決定した。 (結果):ギメラシルは、抗癌剤であるカンプトテシン、5-FU、ヒドロキシウレアのDLD1細胞に対する殺細胞効果を有意に増強した。また、ギメラシルのカンプトテシン、5-FUに対する増感効果は、CHO-k1細胞、Xrs5細胞、XRCC3細胞でもみられたが、その増感の程度は3細胞間で差がみられなかった。また、ギメラシル+カンプトテシン、ギメラシル+5-FUでの組み合わせでの放射線増盛効果を検討したが、相加的な放射練増感効果がみられ、いずれも組み合わせでも、1.3から1.4程度の増感率が得られた。 (考察):ギメラシルは、抗癌剤であるカンプトテシン、5-FU、ヒドロキシウレアの感受性を増感する。ギメラシルの抗癌剤増感効果のメカニズムは、放射線増感効果のメカニズムと異なる可能性がある。 放射線治療と併用すると、ギメラシル+カンプトテシン、ギメラシル+5-FUの組み合わせで、大きな増感効果が得られた。
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