ラジオアイソトープ(RI)標識ペプチドを用いるがんのアイソトープ治療では、腎臓における非特異的な放射能集積のために、治療効果があるにもかかわらず、治療の継続を断念する例が多くみられる。本研究では、この問題を解決するため、新しい酵素感受性標識試薬の開発に取り組む。 以前、申請者らは、「非特異的な腎放射能集積」という同じ問題を有するRI標識抗体フラグメントに対して、尿細管で再吸収される前に腎刷子縁膜酵素の作用で尿排泄性の放射性代謝物を遊離する標識試薬を開発し、適用することで、その腎集積の低減に成功した。本研究では、この成果に基づいて、「母体をペプチドとする放射性医薬品にも適用可能な、腎集積を低減する酵素感受性標識試薬」の開発を目的として、発展的な研究を行う。 初年度である平成22年度は、標識試薬から遊離させるべき放射性化合物、すなわち、高い尿排泄性に加えて、新たな性質を具備する放射性化合物を探索することを目的として検討を進めた。それら二つの性質を有することが期待される放射性化合物、および、その誘導体を設計し、合成を試みた結果、これまでに、それらの合成法をほぼ確立できた。平成23年度は、それらの化合物を用いたin vitro実験、in vivo実験を行うことにより、設計した放射性化合物の腎集積性(尿排泄性)などの性質を評価し、標識試薬から遊離させる放射性代謝物として適しているか否かについて評価する。
|