本研究の目的は、高磁場MRIによる位相画像を用いて、脳幹神経核の鉄濃度定量法を確立し、従来のMRIでは診断が困難であったパーキンソン病などの変性疾患・精神疾患の画像診断に応用し、その病態解明や診断バイオマーカーとしての意義を確立することである。 本学に設置されている高磁場3 Tesla MRIを用い、パーキンソン病患者と健常人ボランティアの神経メラニン画像および鉄濃度測定用の位相画像を撮像した。独自の画像解析ソフトウェア上で新たに解析用プログラム・アルゴリズムを開発し、まず神経メラニン画像において中脳黒質の神経メラニン濃度の半定量解析手法を確立した。本手法を用いて、パーキンソン病患者と健常人ボランティア間で神経メラニン量が有意に異なることが示された。次に、鉄濃度の定量測定に向けて、位相画像を用いた解析プログラム・アルゴリズムを作成中であり、同様の手法にてパーキンソン病患者と健常人ボランティア間での鉄濃度を半定量測定する予定である。患者データにおいては臨床的な重症度や発症からの罹病期間、MIBGシンチグラフィなどの情報を加味して、さらに検討を行う予定である。また、本学に新たに導入される超高磁場7 Tesla MRIでのデータ収集も予定している。 これらの手法により、パーキンソン病患者における中脳黒質での神経メラニンおよび鉄濃度を客観的に評価することが可能となり、病態解明や早期診断におけるバイオマーカーとしての意義を確立したいと考えている。
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