研究概要 |
本年度は、昨年度の続きとして外照射で、脾臓を標的に20Gyから50Gyを投与した。ラットでは、脾臓は腹壁に接した位置にあり、胃、小腸への照射線量が高く胃炎、腸炎を併発したが、解剖にて肝臓組織を染色(HE)したところ、肝実質への障害は低いと考えられた。閉塞性黄疸に誘発される肝硬変モデル(脾腫を伴う)を作成するため、Wistar系雄性ラット(体重200-250g)を使用した。肝機能低下モデルとして閉塞性横断を誘発するために、ether麻酔下に上腹部正中切開を行い、総胆管をlarge pancreatic ductとgreat pancreatic ductの間で2重結紮により切断した。 総胆管結紮4~5週間後、麻酔下にて開腹し脾臓を露出させて脾のX照射照射(20mA、150Kv)を実施した。ラットを左側に固定し、全身を厚さ6mmの鉛シートで防護し、脾臓を滅菌したタングステンシート(3mm)の上で照射した。さらに脾臓摘出ラットを作成した。また、偽手術のみの無処ラットを対照として設定した。 総胆管結繁の肝臓などへの影響では血清総ビリルビン値は無処置ラット群は約1.93mg/dl、結繁後1週ラット群6.90mg/dl、結紮後3週ラット7.5mg/dlであった。肝臓組織ではsinusoidの拡張を認め肝細胞全体が膨化していた。主として肝小乗周辺に浮腫,変性が著明で、Glisson鞘に接する小葉周辺では胆管の拡張,偽胆管の増生がみられ、胆汁うっ滞による肝硬変として矛盾しない所見であった。総胆管結紮後、1週間、3週間では末梢血液中の血小板には有意な減少は見られなかった。総胆管結紮により脾腫傾向が見られたが、照射により脾臓は縮小した。今回の研究では、脾臓照射による血小板の回復には有意な増加は見られなかったが、脾機能亢進に対しては将来的には有効な方法になりうると考えられた。
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