本研究ではMRI高速撮像法において、画質の改善やさらなる撮像時間の短縮化を目指すものである。画像を再構成する手段としてFocal Underdetermined System Solver (FOCUSS)というアルゴリズムを用い、アーチファクトの軽減をはかる。本年度は、Partial Fourier (PF)法と体動補正のそれぞれにおいて新しい撮像技術、画像再構成法を開発したので、それらを記述する。 PF法とは撮像時間短縮のため一部のデータのみ収集する撮像法である。従来のPF法では本来必要なデータ数の65~70%を収集している。これらの方法では画質の劣化は目立たないが、これ以上の撮像時間の短縮は不可能である。本研究では、50%あるいはそれ以下のデータしか収集せず、さらに目立ったアーチファクトを出現させることなく画像を再構成することに成功した。この方法はPF-FOCUSSと名づけられた。 体動補正に関しては、以前よりPROPELLERという方法がよく知られており、この方法は被写体の移動、回転をともに補正できる。ただし、この方法は一般的な高速スピンエコー法に比べ少なくとも1.5倍の撮像時間を要する。本研究ではk-spaceの軌道を蝶ネクタイ様の形状に変え、FOCUSSを用いて画像を再構成することで、画質の劣化をほとんど招くことなく、被写体の移動、回転の補正と撮像時間の短縮(従来の高速スピンエコー法の約0.75倍)を可能にした。この方法はbowtie PROPELLERと名づけられた。 PF-FOCUSS、bowtie PROPELLERともに従来の撮像法の長所を引き継ぎ、撮像時間の短縮に成功したものであり、これらが臨床応用されれば、MRI画像の質を落とすことなく、患者への負担は著しく軽減されるであろう。
|