本研究は、大きな予後改善を期待させるようなブレイクスルーが全く見いだせないでいる膠芽腫(GBM)について、新たな治療法を開発するきっかけを創るための分子生物学的基礎研究である。発がんに関する遺伝学的背景の違いから、primaryとsecondaryの2群に分類し、それぞれの化学放射線治療の感受性を明らかにすることで、GBMの治療法の選択にフィードバックが出来るのではないかと考えた。まず、各群を含む種々の培養細胞株を用いて、放射線治療に対する感受性の評価をはじめた。両群間で放射線感受性に差異を確認しつつ、感受性の違いにアポトーシスの多寡が起因しているかどうかを確認中であるが、現段階でははっきりした結論は得られていない。さらに、アポトーシスや細胞周期に関連したシグナル因子の経時的変化の推移を定量的あるいは半定量的に評価しているところである。こちらに関しては、まだ明確な答えが得られていない状況である。仮にこれらに関連が見いだせれば、2群間での治療方針が変わってくることが示唆される。逆にアポトーシスや細胞周期に関連が乏しいと判断された場合は、DNA修復に関わるDNA-PKcs、Ku70/80、Rad54のTMZと放射線照後の発現変化についてタンパクやリン酸化を主とした検討が必要であると考えている。また、別系統でTMZの放射線増感効果を解明するために、p53statusやEGFR発現増強あるいはMGMT遺伝子プロモーターのメチル化の有無との関係について検討しているところである。可能であれば、当教室で化学放射線治療を行った症例を対象に、腫瘍組織の分子生物学的分析と化学放射線治療効果の関係を解析したいと考えている。
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