本研究は、多形膠芽腫Glioblastoma Multiforme(GBM)の新たな治療法を開発するきっかけを創るための分子生物学的な基礎研究である。発がんに関する遺伝学的背景の違いから、GBMをprimaryとsecondaryの2群に分類し、それぞれの化学放射線治療の感受性を明らかにすることで、治療法の選択にフィードバックが出来るのではないかと考えた。 昨年から各群を含む種々の培養細胞株を用いて、放射線治療に対する感受性の評価を行なっている。両群間で放射線感受性に差異を確認しつつ、感受性の違いにアポトーシスの多寡が起因しているかどうかを確認しているが、はっきりした結論は得られていない。また、アポトーシスや細胞周期に関連したシグナル因子の経時的変化の推移を定量的あるいは半定量的に評価しているが、こちらに関しても、明確な答えが得られていない状況である。仮にこれらに関連が見いだせれば、2群間での治療方針が変わってくることが示唆される。逆にアポトーシスや細胞周期に関連が乏しいと判断された場合は、DNA修復に関わるDNA-PKcs、Ku70/80、Rad54のTMZと放射線照後の発現変化についてタンパクやリン酸化を主とした検討が必要であると考えている。 一方で、当院で2009年1月から2010年12月の間にGBMに対して術後放射線治療を行った50例を対象として後方視的に研究している。症例の内訳は、Primary GBMが43例、secondary GBMが7例、男性32例、女性18例、年齢の中央値は、55.6歳(範囲3.9歳から77.4歳)、観察期間の中央値は、13.3ケ月(範囲2.7~53.3ケ月)であった。現在、TMZの放射線増感効果を解明するために、p53 statusやEGFR発現増強、あるいはMGMT遺伝子プロモーターのメチル化の有無との関係について検討しているところである。
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