本研究の目的は新しいタイプの陽子線治療装置を用いた陽子線治療における品質管理手法を構築してその照射精度を向上させることであり、平成22年度から24年度までの3カ年での研究計画で本研究の成果を臨床に反映させることを目指す。平成22年度の到達目標は高度計算ワークステーションを構築して陽子線ビームのシミュレーションを行うことと、陽子線を計測するための検出器の特性を明らかにすることである。 今年度はまだ陽子線システムが稼動していないため、研究環境を整備することと陽子線計測に使用するラジオクロミックフィルムおよび3次元ポリマージェル検出器にかんしてその特性を研究した。研究計画当初の予定であった8コアCPUのワークステーションは予算の関係で見送りとなったが、その代替としてメモリを増設した4コアCPUのワークステーションを購入し、陽子線シミュレーションコードGEANT4を計算可能にした。模擬計算を行ってその精度を確かめるべく既稼動施設で実測を行う予定であったが、東北太平洋大地震の影響で今年度の実施は見送り、来年度以降の課題とした。ラジオクロミックフィルムおよび3次元ジェルシステムに関しては、7月から8月までの間に米国(ミネソタ大学)において使用法および基礎特性について実験を重ねて一定の知見を得た。この研究成果についてはラジオクロミックフィルムについては今年度中に国内外の学会で発表を行った。3次元ジェルシステムについては平成23年度の米国医学物理学会において発表する予定である。今年度得られたこれらの結果を踏まえて来年度以降には実際の照射を想定した実験を行う予定である。
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