グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)やグルタチオン(GSH)は、様々な疾患原因のひとつと考えられている酸化ストレスにより誘導されることから、これらのインビトロでの測定は、酸化ストレスマーカーとして神経変性疾患や腫瘍の病因解明を目的として広く実施されている。インビボでのGST活性の測定も、様々な疾患の病態解明や診断に有用であると期待されるが、未だその方法は無い。そこで本研究では、脳内のGST活性をインビボで定量測定し得る放射性薬剤の開発研究を行った。インビボでの脳内代謝速度の測定は、脳内に到達した放射性薬剤が測定対象とする酵素等により特異的に、かつ脳内に保持される化学形へと至適な速度で代謝されることで可能となる。このことから、候補化合物について血液脳関門透過性、GST特異性、および放射性代謝物の脳残留性を検討した。 6位を^<18>Fもしくは^<76>Brで標識した9-アルキルプリンを標識合成し、これらの化合物のラットおよびマウスの脳ホモジネート中での代謝速度を検討したところ、GSHのみを含有する緩衝液中での6-[^<18>F]フルオロ-9-メチルプリンおよび6-[^<76>Br]ブロモ-9-エチルプリンの代謝速度は、ホモジネート中と比べて遅く、両化合物の代謝がGST依存的であることを示唆し、代謝速度の点でも有望な化合物であることを示唆した。また脳内化学形の基礎的検討では、両化合物の代謝がGSH抱合であることを示唆した。以上の結果は、両化合物が脳内のGST活性をインビボで定量測定し得る放射性薬剤の有力な候補であることを示唆した。
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