研究概要 |
本研究は、心筋梗塞後の致死性心室性不整脈に対する重粒子線治療の有効性を確かめ、臨床応用の実現に向けた前段階研究である。本研究の目的は、縦隔に対する重粒子線照射予定患者(肺癌が主)を対象に、ホルター心電図(高分解能・高信頼性を有するElamedical社の記録器)を施行し、心臓の重粒子線被曝による電気生理学的影響の有無を明らかにするとともに、心臓に対する重粒子線被曝を照射容積-線量関係を用いて定量化し、電気生理学的影響と被曝の相関を明らかにすることである。この結果は、心筋梗塞後の致死性不整脈の予防治療の臨床応用の際、不整脈予防の効果予測、心臓への照射部位、方向及び安全性に寄与できると考えられる。本年度は、登録した10症例の、心室遅延電位(LP),T波のオルタランス(TWA),QT時間のばらつき(QT-D)の経時的変動の解析し、重粒子線の安全性を確認した。実際の重粒子線照射に用いられる治療計画CTを用いて、心臓各部位を、コンピューター上にてコンツールすることにより同定し、癌治療のために照射される線量にて、心臓への線量分布を計算し、心臓各部位の重粒子線被曝を照射容積-線量関係を用いて定量化し、現在解析中である。今回登録された症例の中に、非常に稀な腫瘍(1000万人に4人程度の発症率と推測される)であるが、致死的で治療法の確立されていない疾患である、心臓の悪性腫瘍(左房原発平滑筋肉腫、骨肉腫の左室壁心筋転移)が2例あり、重粒子線の電気生理学的安全性とともに、抗腫瘍効果も確認された。
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