膵臓癌は最も予後不良な癌種の一つであり、腫瘍径2cm未満の腫瘍に限っても5年生存率は57%である。また、早期の段階から転移が見られ、外科的治療が困難な症例が多いことから、転移前の超早期診断が、予後の改善において非常に重要である。本研究課題では、膵臓癌で高発現しているα_vβ_3インテグリンに着目し、RGDペプチドを利用したMRI用分子プローブを開発する。 磁性体(Gd、Fe、Mn)の封入とRGDペプチド修飾可能なリポソームをDSPC、Cholesterol、PEG-DSPE、Mal-PEG-DSPEから合成し、マレインイミドを介してRGDペプチドを結合させることに成功した。RGDペプチドの有無によるα_vβ_3インテグリンへの標的指向性を確認するために、ヒト膵がん細胞(Panc-1)を用いて^<125>I-エキスタチンに対する50%結合阻害濃度(IC_<50>)を測定した。その結果、RGD修飾リポソームのIC_<50>は2-6μM(脂質量として)であったのに対し、RGD未修飾リポソームでは^<125>I-エキスタチンの結合を阻害しなかった。このことから、RGD修飾リポソームのα_vβ_3インテグリンに対する標的指向性を確認することができた。また、磁性体としてFe-デフェロキサミンの本リポソームへの導入についても確認した。 今後、緩和時間の測定や担癌マウスを用いた体内分布、イメージングの検討を進めていく。
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