ヒト精細管MRI装置の開発に関連して、MRIの信号を補正する画像処理法の開発を行った。 平成22年度に開発した、ヒト精巣用の信号受信器(小口径の表面コイル)では、被写体が受信器に近いほど信号が強く、遠いほど弱くなる。従って、コイルに垂直な断面の精巣MRIを撮影すると、得られたMRI上、コイルからの距離に応じて信号の強弱が生じ、診断の障害となる。そこで、測定後に信号の強弱を補正する画像処理ソフトウェアの開発を行った。 このソフトウェアでは、補正したいMRIを、画素毎にコイルの感度マップで除算し、信号の強弱を均一化する。コイルの感度マップは、補正したいMRIとは別に取得したプロトン密度強調画像から作製した。先ずプロトン密度強調画像を閾値処理し、被写体の存在領域のみを抽出し、適当な画素値を与え、同時にバックグラウンドには画素値0を与え、二値化画像を作製した。次に元のプロトン密度強調画像と二値化画像にローパスフィルターをかけ、前者を後者で除算し、コイルの感度マップを得た。ローパスフィルターの条件は、被写体がもつ組織コントラストを排除し、コイル感度のみを抽出できることと、リンギングやエッジ強調アーチファクトが補正後の画像に生じないことに留意して、最適化した。ファントム実験や動物実験の結果から、このソフトウェア処理によってMRIの信号の強弱が補正され、被写体が本来持つ構造や画像コントラストを正しく表示できた。 この補正法により、表面コイルを使った精巣MRIにおいて、精細管の形態や信号強度を適切に評価できると期待できる。
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