研究概要 |
我々の研究室では、新しい癌細胞初代培養法を確立し、「Cancer Tissue Originated Spheroid(CTOS)法」と名付けて報告した(Kondo 2011 PNAS、Endo 2013 JTO, Okuyama 2013 J Urol)。この方法は、癌手術検体を機械的、酵素的に分散させて癌細胞塊を回収し、浮遊培養するもので、純粋ながん細胞を効率よく初代培養することができる。この方法で得られたCTOSは、in vitroで増殖することが可能で、またマウス移植腫瘍はオリジナルの患者検体と同様の構造を示す。本研究では、CTOSを用いた放射線感受性試験を確立することを試みた。 昨年度までに、肺がん、および子宮頸がんにおいてin vitro, in vivoの放射線感受性試験を実施し、放射線感受性の異なる数種類のCTOSを見出した。今年度は、これらのCTOSの放射線照射前後における遺伝子発現の変化をマイクロアレイで網羅的に解析し、放射線感受性のバイオマーカーとなりうる分子の探索を行った。その結果、放射線抵抗性の子宮頸がんにおいて、HIF1α下流の遺伝子群が有意に変動することが明らかとなった。HIF1αの発現を薬剤で抑制することで、CTOSの放射線感受性が上昇した。これらのことから、HIF1αが子宮頸がんにおける放射線感受性のバイオマーカーとなること、またHIF1α阻害剤が放射線感受性増感剤となりうることが示唆された。
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