本年度も引き続き近隣の施設から子宮肉腫の疑いがある子宮腫瘍患者を募集し、FLT-PETおよびFDG-PETを施行した。2011年6月で症例募集を終了し、最終的に15例を対象として解析を行った。癌を含む悪性疾患の診断に関する感度はFLT-PET、FDG-PETともに100%であった。特異度および正診率については、FLT-PETで90.0%、93.3%であるのに対して、FDG-PETは70.0%、80.0%であり、FLT-PETの方が優れる結果となった。また細胞増殖能の指標とされるKi-67抗体発現率との比較においてFDG-PETでも一定の相関性はみられたものの、FLT-PETにおいてより優位な相関が得られた(R^2=0.91、P<0.001)。PET検査に併せてMRIも同時期に撮像し、各PET検査との融合画像を作成した。融合画像はコンピュータ上でソフトウェア的に行い、全例で特に問題なく作成できた。 従来の診断法にFLT-PETを追加することで、従来の診断法では判断が難しかった子宮肉腫・子宮筋腫の鑑別が容易になるものと考えられ、不要な手術を避けることができる可能性が示唆された。近年、良性の子宮筋腫に対して施行される塞栓療法や超音波収束療法などの子宮温存療法において問題となる、潜在性の子宮肉腫を検出する上でも、一定の効果が期待できる。一般の腫瘍性疾患の良性・悪性の鑑別に有用とされるFDG-PETは、本研究の結果FLT-PETに比して擬陽性が多く発生する可能性が高く、診断には注意を要することが示唆された。
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