研究概要 |
【目的】内因性血管,リンパ管新生制御因子として我々が同定したColdShock Domain Pritein A (CSDA)について,発癌過程におけるCSDA発現の変化と,癌細胞からの血管,リンパ管新生因子分泌能の関連を明らかとする.さらにCSDAの調節が癌増殖,転移の抑制に繋がる検討する.【結果1】1,CSDAの発現;CSDAは低酸素環境下3日目から上昇し,このとき細胞はアポトーシスが誘導されていることが,ミトコンドリア膜電位変化やTUNEL染色で明らかとなった.またこの変化にはオートファジーは関与していなかった.さらにアポトーシスを薬剤で誘導するとCSDAの発現が上昇したことから,CSDAの発現調節にはアポトーシスが重要であった.2,癌細胞への作用;マウス大腸癌,肺癌細胞,ヒト胃癌細胞にCSDAを導入したところ,c-fos promoter活性,VEGF promoter 活性ともに上昇した.理論的には両promoterを抑制する機能を持つCSDAの作用としては矛盾しており,これを説明する新たな機序が必要となる.[仮説]次の仮説を立てた.1,CSDAは癌幹細胞,非幹細胞で発現が異なっているのではないか.2,非幹細胞にCSDAが発現をしているのであればCSDAは腫瘍形成能力の喪失に関与しているのではないか.3,CSDAが癌幹細胞に発現せず非幹細胞に発現しているなら,非幹細胞のCSDA発現による変化が,癌幹細胞に作用し血管新生誘導因子が分泌されるのではないか.【結果2】3,乳癌細胞4T1の癌幹細胞分離;FACSによりCD44-CD24+細胞を幹細胞分画とした.全体の2.5%程度であり今後の解析のため更なる検討が必要となる.【結語】癌細胞におけるCSDA発現,機能の新たな機序が必要であり,癌幹細胞コンセプトを導入した仮説を打ち出した.今後これの検証が必要である.
|