研究概要 |
時計遺伝子であるbHLH型転写因子DEC1およびDEC2は、時計中枢である視交叉上核で、概日リズムを形成する。一方、免疫応答系や種々の組織分化の制御、癌化や低酸素応答、アポトーシスの制御など、生体内における様々な生理現象に関与することが報告されている。しかし、乳癌細胞における機能は十分に解明されていない。 ヒト乳癌細胞株MCF-7細胞へ抗癌剤paclitaxelを濃度依存的処理し、アポトーシスを誘導後、DEC1とDEC2の発現変化を検討した。またRNA干渉法(siRNA)によりDEC1またはDEC2の発現制御(knockdown)を行い、アポトーシスに対する影響や、p53,Bcl-2の発現変化について検討を行った。 1.ヒト乳癌MCF-7細胞で、paclitaxelを24h処理することによりアポトーシス関連因子(cleaved PARP,cleaved caspase-8,p53,Bcl-2)が誘導された。さらに、DEC1およびDEC2の発現も上昇した。 2.MCF-7細胞においてDEC1 siRNAとpaclitaxelのcombination処理により、アポトーシスが抑制し、p53の発現が減少、Bcl-2の発現が上昇した。一方、DEC2 siRNAとpaclitaxelのcombination処理によって、アポトーシスが誘導され、p53の発現が上昇した。 3.PaclitaxelとDEC1 siRNAのcombination処理では、アポトーシス(nuclear condensation)の頻度が減少した。一方、paclitaxelとDEC2 siRNAとのcombination処理では、アポトーシスの頻度が上昇した。
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