研究概要 |
近年、日本における乳癌患者は増加傾向の一途を辿っている。乳癌患者の罹患年代は、40-50歳台と若く、人生の中で再発を余儀なくされることが多い。再発患者の多くは抗がん剤の治療をすることとなる。患者のQOL(quality of life)を下げずに、治療を継続することは非常に重要かつ急務である。 Basic helix-loop-helix (bHLH)型転写因子である 時計遺伝子DEC1(BHLHE40/Stra13/Sharp2)は、低酸素状況下で細胞増殖や細胞のアポトーシスと関わっている。Epithelial-mesenchymal transition (EMT)は、腫瘍において、浸潤・進展において重要な役割を果たしている。 今回我々は、TGF-βによって誘導されるEMTにおける時計遺伝子DEC1の重要性を明らかにした。ヒト癌細胞において、時計遺伝子DEC1はTGF-βによってup regulateされた。また、DEC1は、Smad3 (pSmad3), snail, claudin-4, N-cadherinを制御していることも明らかにした。さらに、TGF-β存在下で、DEC1をsiRNAによりノックダウンするとEMTが細胞形態上抑制されるとこが分かった。一方、ヒト癌細胞では、TGF-βにより細胞形態は紡錘形変化を示した。我々はさらに、ヒト癌細胞では、TGF-β処理下で、時計遺伝子DEC1を発現させると、細胞の浸潤能が制御されることを発見した。免疫染色化学検査では、ヒト癌組織において、DEC1, pSmad3は発現しており、一方、claudin-4は弱い発現を示した。これらの実験結果から、時計遺伝子であるDEC1は、ヒト癌細胞・ヒト組織で、EMTにおいて重要な役割を果たしていることが分かってきた。
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