HLA抗体の中には、グラフト内での抗原抗体反応後の障害が軽減出来るものがある。HLA class I抗体接着により、内皮細胞を活性化するMEK/ERK経路ではなく、細胞保護に必要なPI3K/AKT経路が活性化されることが、免疫順応獲得に必須であり、HLA class I抗体接着により、細胞保護遺伝子であるferritinやHO-1が、転写因子Nrf2によってPI3K/AKT経路に依存して活性化することを示した。一方、ABO不適合移植で見出される抗原抗体接着が引き起こす内皮細胞での研究は、私どもが糖鎖発現株を樹立し詳細な研究を行う事で、ABO-、HLA-不適合移植における相違点を見出すことに成功した。そこでは免疫順応の一端がAB糖鎖に対する抗体接着によるERKの不活性化と、それに伴う補体制御因子の誘導であると明らかにした。
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