研究概要 |
平成23年度の「ラット脂肪肝モデルの確立と肝虚血再還流障害に対する炎症と凝固の評価」の研究実施計画は主に、下記の2点であり、1項目目は(1)肝虚血再還流脂肪肝モデルラットの作製、活性化プロテインC(APC)およびトロンボモジュリン(TM)の投与による細胞保護効果であった。 脂肪肝ラットの作成は、薬剤誘導性よりは、実臨床に即した高脂肪食にて作成した。しかし、病理学的評価ではmicrostatosisであった。脂肪肝ラットの70%肝虚血再還流モデルラットを作成したところ、1週間後の生存率は正常肝と比し不良であった。脂肪肝ラットにおける虚血再還流障害の凝固障害・炎症反応の解析を行う。TM投与群を作成し、コントロール群と比較して肝虚血再還流による類洞内血栓形成に対するTMの保護効果の評価を行ったが、肝機能は脂肪肝ラットは上昇するもTM投与群におけるTMの血栓形成抑制作用は、免疫染色による類洞内フィブリン沈着、血清FDP濃度は有意差を認めなかった。抗炎症効果もTNFαおよびIL-6の肝全体における発現を比較するも明らかな差がなく、TMの投与量やタイミングを再考中である2項目目は臨床検体における炎症および凝固因子の測定であった。昨年度に施行した、生体肝移植周術期の血液検体を回収し、凝固・抗凝固因子として血小板やアダムTS13、プロテインS、プロテインC,TMなど血中動態を解明するために測定を行った。予後因子としては術後14日目の血小板数が5万以上か否かが規定因子となり、それにはアダムTS13の数値が関連する可能性が示唆されており、臨床検体の蓄積を重ねている。ドナー肝のサイズや脂肪肝の程度などにより、移植後の凝固・炎症反応に影響を及ぼすかの評価・解析を行っているが、GRWRが0.8以下のsmall for sizeではFFP(新鮮血漿)の輸血量が多く、解析困難でかつばらつきがおおくなり検討困難であり、再考中である。
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