本研究の目的は、免疫グロブリン大量投与療法による制御性T細胞(Treg)の誘導機構を解明し、臓器移植における新規寛容誘導法を目指した基礎研究を行うことである。成人間生体肝移植後にリンパ球混合試験を応用した免疫モニタリングを用い、レシピエントの抗ドナー低応答性を確認しつつ免疫抑制療法の最適化を行ったところ、肝移植後早期に免疫抑制剤の完全離脱 (Operational tolerance)を6例経験した。これらの寛容症例には、共通して免疫グロブリン大量投与療法がなされていた。また、免疫抑制剤完全離脱症例の末梢血中には非離脱例に比べTregの有意な増加を認めた。また、non-tolerance症例でも原疾患別に肝移植後抗ドナーstimulationindexを比較すると、高力価HBs抗体含有免疫グロブリン(HBIG)療法を受けたB型肝炎症例で抗ドナー応答の低下傾向を認めた。免疫グロブリンのアロ応答への関わりを評価するために、抗原提示能抑制効果およびHLA拘束性抑制能の有無の評価を行った。HLA既知の健常人ボランティア末梢血から採取したDCに各種免疫グロブリン(Whole IgG、IgG-Fc、IgG-Fab、IgG-(Fab)2を12~24時間作用させ、HLAの異なる健常人ボランティア末梢血リンパ球と5日間共培養した。その後、フローサイトメトリーを用いて免疫グロブリンを添加しないコントロール群と比較してリンパ球のアロ応答性に変化をきたすか否かを解析した。その結果、Fc部を含む免疫グロブリン添加群はコントロール群に対して、Stimulation Indexが低い傾向を呈した。
|