研究概要 |
癌免疫機構におけるT細胞性免疫応答に関連し,近年注目されているB7 ligand familyの中で,特にB7-H3およびB7-H4に着目し,胃癌臨床検体を用いてこれらの発現と病理学的背景および予後との関係について検討し,B7-H3およびB7-H4発現の臨床的な意義について解析した。切除胃癌95例の術前末梢血液を対象とし,コントロールとして胃癌細胞株および健常者の末梢血液検体を使用した。B7-H3 mRNAの発現は定量RT-PCR法により評価した。胃癌細胞株全例において発現は認められ,胃癌患者における発現は健常者に比較し,明らかに高値であった(P<0.0001)。臨床病理学的因子との関係ではB7-H3高発現群は有意にステージと相関していた(P=0.013)。また高発現群の予後は低発現群に比較し,明らかに予後不良であり(P=0.02),多変量解析ではリンパ節転移と共に独立した予後因子の一つであった(P=0.046)(Cancer sci : 2012)。次に切除胃癌120例の原発巣におけるB7-H4発現を免疫染色にて評価した。高発現群は31例(25.8%)に認められ,臨床病理学的因子との関係ではB7-H4高発現群は有意にステージと相関していた(P=0.04)。また高発現群の予後は低発現群に比較し,明らかに予後不良であり(P=0.001),多変量解析では唯一の独立した予後因子であった(P=0.035)。さらにCD3抗体による免疫染色を用いた腫瘍浸潤Tリンパ球数との関係では逆相関が認められ,免疫応答を抑制している可能性が示唆された(World J Surg : 2012)。これらの結果より,胃癌におけるB7-H3およびB7-H4の発現は,癌の悪性度や予後を予測する上で有用な指標となり,新たな免疫療法のターゲットとなる可能性が示唆された。
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