本研究では、先天的に再生不良性貧血症状を呈する疾患マウスの中でも造血幹細胞ではなく造血支持細胞に異常のあるマウスをレシピエントとして用い、申請者らが開発した『高純度primary MSCs分離法』で得た間葉系幹細胞で移植を行う。それにより造血微小環境(ニッシェ)の再構築を行い、『造血支持能の獲得と貧血症状の改善』を誘導し、再生不良性貧血の新規治療モデルの確立を行うことが目的である。 まず、申請者らは造血支持細胞に異常を持つSL/SLdマウスのMSCsに異常がないか調べたところ、その自己複製能・分化能に異常がないことがわかった。 実際の治療にMSCsを用いる場合、骨髄への局所移植ではなく経静脈移植により、骨髄へ生着させることができれば患者への移植手術の負担を軽減させることができると考えられる。しかし、MSCsの経静脈移植を行っても、骨髄に生着する細胞が少ないことがわかっている。その理由として、MSCsは放射線照射に対して抵抗性を持ち、移植MSCsが生着できるニッシェが空かないことがわかった。そこで、放射線照射前に薬剤等の投与を行った後移植を行い、MSCsの生着率解析を行った。様々な薬剤等を試してみたが、骨髄から末梢血にMSCsを含むCD29陽性細胞を動員すると報告があるSubstance Pを用いた場合、個体差はみられるが、投与なしと比較して~20%の生着率の改善が確認された。この方法を用いて疾患マウスの貧血改善がみられるか確認を行う予定である。
|