研究概要 |
我々は、HDAC阻害剤であるvorinostatが、ヒト乳癌細胞MDA-MB-231へCaspase-3活性化によるアポトーシスを誘導し、その過程においてp38MAPKが必須であることを報告した(Uehara et al., Cancer Lett. 2012)。近年、miRNAの発現異常が様々な癌細胞で見出され、増殖、浸潤、転移への関与が報告されている。我々は、HDAC制御を介した癌抑制におけるmiRNAの関与を検討するために、vorinostat誘導miRNAの同定とその機能解析を試みた。miRNAアレイによるスクリーニングの結果、vorinostat処理MDA-MB-231細胞において、顕著な発現上昇をみる18種のmiRNAの同定に成功した。これらmiRNAの発現レベルの比較を、正常様乳腺上皮細胞をコントロールとし、異なるサブタイプの乳癌細胞株を用いて行った。その結果、悪性度の高いbasal-likeサブタイプの乳癌細胞においてmiR-148aの顕著な発現低下がみられた。そこで、MDA-MB-231細胞へのmiR-148aの導入により癌細胞表現型に及ぼす影響を検討したところ、運動能・浸潤能の抑制、ならびにvorinostatへの感受性の増大が確認された。以上の結果より、miR-148aが乳癌抑制遺伝子として機能している可能性が示唆された。
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